瀬戸内国際芸術祭とベネッセアートサイト直島

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撮影:大沢誠一

瀬戸内の島々を舞台に30年以上にわたって多角的なアートプロジェクトを展開してきたベネッセアートサイト直島。
世界中から来訪者を呼ぶことができるような魅力的で文化的な地域開発を行い、地域の活性化を図ることを目的とし、2000年代初頭からベネッセアートサイト直島と香川県を中心に構想された「瀬戸内国際芸術祭」は、2022年で5回目の開催となりました。

ここでは、瀬戸内国際芸術祭とベネッセアートサイト直島の活動の歴史や活動の背景にあるもの、島民の方々が期待することやアーティストが見た島の姿、2022年新規公開作品など、瀬戸内の島々で起きた様々なアート活動がもたらした多角的な視点を紹介します。

  1. 福武總一郎「瀬戸内海と私」
    ――なぜ、私は直島に現代アートを持ち込んだのか

    かつて私は、若いころは主に東京で生活をしていましたが、40歳になったときに父が急逝したため、本社のある岡山へ帰る事になり、父が進めていた直島での子どもたちのキャンプ場作りのために何度も直島を訪れるようになりました。そのプロジェクトに関わりながら、島の人々との交流を深め、また趣味のクルーズで瀬戸内の島々を回っていくうちに、瀬戸内海の美しさ素晴らしさと同時に、歴史や文化、島々に暮らす人々のあり方を再認識するようになりました。...
  2. 瀬戸内国際芸術祭に至るまで
    ベネッセアートサイト直島・アーカイブより

    「瀬戸内国際芸術祭」は 2022年で5回目の開催となりました。主催は、香川県をはじめとする複数の自治体や団体からなる瀬戸内国際芸術祭実行委員会であり、ベネッセアートサイト直島を展開する直島、豊島、犬島も主な会場の一つとして参加しています。2010年の第 1 回の開催以降、毎回 100 万人近い来場者が訪れていますが、それは香川県をはじめ、各市町、島の住民など多くの方々の尽力によって支えられてきた結果です。...
  3. 芸術性と風土性と場所性の卓越した融合
    寄稿文:西田正憲

    オンラインを通じて遠隔のコミュニケーションが可能となり、ネットで見たい写真や動画を瞬時に探しだせるようになった。ずいぶんと便利な時代になったものだが、我々はこのような間接体験の世界だけで充足するわけはなく、オンライン時代が到来し、写真や動画が氾濫すればするほど、直接体験の重要性が増すことにも気付いている。...
  4. 瀬戸内国際芸術祭を伝える~こえび隊がつなぐ島と来島者
    甘利彩子(こえび隊)

    瀬戸内国際芸術祭を伝える~こえび隊がつなぐ島と来島者
    「瀬戸内国際芸術祭(以下、芸術祭と表記)は、2010年から始まった現代アートの祭典です。テーマは「海の復権」「島の元気」。来島者はアート作品の展示を見るだけでなく、アート作品から島の歴史や文化を知り、集落を歩き、地元の食べ物を食べることによって島の暮らしを垣間見ることができます。島で暮らす人にとっては、多くの人たちと交流することや、3年に一度の芸術祭に合わせた地域計画を立てることが島の元気へとつながっています。...

椹木野衣 特別連載

  1. 椹木野衣 特別連載①
    瀬戸内国際芸術祭2022が『開く』意味

    瀬戸内国際芸術祭を伝える~こえび隊がつなぐ島と来島者
    2022年4月14日、「瀬戸内国際芸術祭2022」が開幕した。これから11月6日のフィナーレに至るまで長い会期が始まる。すでに春会期を終え、夏会期もまもなくオープンを迎える。3年に及ぶコロナ禍の収束はまだ定かでないが、幸先よく春会期を観て歩く機会を持った。本連載では以後、夏会期、秋会期の行方を私の視点から各回で報告し、最終回で若干の所感を述べたい。...
  2. 椹木野衣 特別連載②
    宇野港でしか実現できない展示と小豆島福田集落での試み

    宇野港でしか実現できない展示と小豆島福田集落での試み
    8月2日、3日。猛暑とはいえ天候に恵まれた夏会期開幕直前、小豆島、豊島、犬島、宇野と、ふたたび「瀬戸内国際芸術祭2022」(以下、瀬戸芸)の会場を見て回った。それぞれに見応えある作品が続いたことは言うまでもないが、今回、とくに印象に残ったのは、最後に見て歩いた宇野港周辺の展示群だった。...

活動の背景――自然、アート、建築、コミュニティ

  1. 「今、瀬戸内から宇沢弘文~
    自然・アートから考える社会的共通資本~」レポート

    「今、瀬戸内から宇沢弘文~<br>自然・アートから考える社会的共通資本~」レポート
    新型コロナウイルス感染症をきっかけに、世界が大きく変化をしている現在、私たち人間は、いかに生きるべきなのか。自然と人の心を大切にした経済学者、宇沢弘文氏(1928~2014年)が提唱した社会的共通資本を基に、これからの社会の在り方や「よく生きる」を考えるオンラインフォーラム「今、瀬戸内から宇沢弘文~自然・アートから考える社会的共通資本~」が、2020年7月19日に宇沢国際学館主催でベネッセアートサイト直島にて開催されました。
  2. 直島町民とアートが密接にふれあう
    「町民感謝祭 2021」レポート

    直島町民とアートが密接にふれあう「町民感謝祭 2021」レポート
    ベネッセアートサイト直島では、2021年11月22日(月)に直島町民限定で「町民感謝祭 2021」を開催しました。日頃よりベネッセアートサイト直島の活動へのご理解・ご協力をいただいている直島町民の皆様に感謝を込めて、直島の各アート施設での作品鑑賞や参加型イベントなど、各施設ならではのプログラムをお楽しみいただくことで、アートを軸とした活気ある直島の一日を創出することを目的としています。
  3. 日本・デンマーク外交関係樹立150周年に際した、
    瀬戸内海の島々訪問とシンポジウム

    日本・デンマーク外交関係樹立150周年
    一年をとおして日本・デンマーク外交関係樹立150周年を祝うイベントが行われた2017年。その一環として、自然・アート・建築・地域振興の可能性を共に考えるため、デンマークの著名な建築家やアーティスト、学者、文化庁などの行政関係者による代表団が10月9日から11日までの3日間、直島、犬島、豊島を訪れました。
  4. 本当の豊かさとは何かを考える場所
    地中美術館「クロード・モネ室」

    本当の豊かさとは何かを考える場所
    地中美術館は瀬戸内の美しい景観を損なわないよう建物の大半が地下に埋設され、館内には、クロード・モネ、ジェームズ・タレル、ウォルター・デ・マリアの作品が安藤忠雄設計の建物に恒久設置されています。この美術館の構想は、モネの描いた2×6メートルの作品を取得したことをきっかけに始まりました。

島民が見たアートへの期待

  1. アートで豊島がもっと賑やかになれば

    アートで豊島がもっと賑やかになれば
    豊島・家浦地区の古い民家を改修してつくられた豊島横尾館。その豊島横尾館のお隣の民家で、緋田清美さんは育ちました。
    「ここ(豊島横尾館)はもともと、緋田家の本家だったんですけど、しばらく空き家になっていたので、美術館になると聞いた時は大賛成でした。外観は当時と変わっていませんし、部屋も昔のままなんです。庭は赤くなっていますけど(笑)、立派なままで、やっぱり本家やなという感じです」
  2. 人と人との出会いがあるミュージアム

    人と人との出会いがあるミュージアム
    ホテルと現代アートの美術館が一体となったベネッセハウス ミュージアムでフロント業務に携わっている志村正義さん。直島生まれ、直島育ちの志村さんは、2001年からベネッセハウスで働きはじめ、今年でちょうど20年目を迎えます。ホテルのお客様の中には、志村さんに会うことを目的に宿泊される方も多くいらっしゃるそうです。
  3. 島の暮らしとともに

    島の暮らしとともに
    日常的に作品と関わる暮らしとはどのようなものなのでしょうか。今年90歳を迎える直島町民の田中春樹さんは、1990年代からベネッセアートサイト直島の活動に関わってくださっています。最近では宮浦ギャラリー六区で開催された《瀬戸内「百年観光」資料館》に田中さん自作のスクラップブックが展示されました。今回の記事では、約30年に渡るベネッセアートサイト直島でのエピソードについて田中さんに振り返っていただきました。
  4. 福田アジア食堂を運営するみなさん

    福田アジア食堂を運営するみなさん
    日常的に作品と関わる暮らしとはどのようなものなのでしょうか。今年90歳を迎える直島町民の田中春樹さんは、1990年代からベネッセアートサイト直島の活動に関わってくださっています。最近では宮浦ギャラリー六区で開催された《瀬戸内「百年観光」資料館》に田中さん自作のスクラップブックが展示されました。今回の記事では、約30年に渡るベネッセアートサイト直島でのエピソードについて田中さんに振り返っていただきました。

アーティストが見た島の姿~これまでの軌跡

  1. ≪瀬戸内「百年観光」資料館≫に至るまで

    ≪瀬戸内「百年観光」資料館≫に至るまで
    ≪瀬戸内「   」資料館≫は、建築家・西沢大良さんが手がけた直島・宮ノ浦地区のギャラリー「宮浦ギャラリー六区」を舞台に、瀬戸内海地域の景観、風土、民俗、歴史などについて調査、収集、展示し、語り合う場としてスタートしたプロジェクトです。今回のブログでは、≪瀬戸内「   」資料館≫の第2弾として2020年7月~8月限定で公開される≪瀬戸内「百年観光」資料館≫について、プロジェクトを構想したアーティスト・下道基行さんにお話をうかがいました。
  2. 「嵐のあとで」~ストーム・ハウス感謝会

    「嵐のあとで」~ストーム・ハウス感謝会
    ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラーによる「ストーム・ハウス」は、実際に使われていた豊島・唐櫃からと岡の空き家を改修し、嵐がやってきてから過ぎ去るまでの約10分間を体感できる作品です。2010年7月19日、第1回瀬戸内国際芸術祭の開催と同時に誕生し、施設の老朽化のため、2021年11月28日をもって12年間の歴史に幕を閉じました。
  3. 豊島八百万ラボ スプツニ子!トーク

    豊島八百万ラボ スプツニ子!トーク
    豊島八百万ラボはアーティスト・スプツニ子!さんが構想した、先端科学とアートとのコラボレーションにより、新たな神話を生み出そうとするアート施設です。豊島八百万ラボでの最初の作品「運命の赤い糸をつむぐ蚕‐たまきの恋」は2016年3月の公開から約4年間に渡り展示されてきましたが、2020年2月11日(火)をもって公開を終了しました。
  4. The Naoshima Plan「水」お披露目会

    >The Naoshima Plan「水」お披露目会
    瀬戸内国際芸術祭2019開幕直前の2019年4月24日、The Naoshima Plan 2019「水」の直島島民に向けたお披露目会が開かれました。開催記念式典では、瀬戸内国際芸術祭 総合プロデューサーの福武總一郎(ベネッセアートサイト直島代表)が集まった直島島民の方々に対して挨拶を述べました。

ベネッセアートサイト直島 2022年新規公開作品

  1. ヴァレーギャラリー

    ヴァレーギャラリー
    ヴァレーギャラリーは、祠をイメージした小さな建物と周囲の屋外エリアで構成されます。境界や聖域 とされる谷間に沿うように建てられた建築は、二重の壁による内部空間が内省的である一方半屋外に開かれ、光や風など自然エネルギーの動きも直接的に感じ取れます。建築と、周囲の自然や地域の歴史を映し出すこれらの作品が響き合い、改めて自然の豊かさ や共生、根源的な祈りの心や再生などについて意識を促します。
  2. 杉本博司ギャラリー 時の回廊*1

    杉本博司ギャラリー 時の回廊
    杉本博司ギャラリーは、杉本の直島における長年にわたる取組みが、作家の究極の作品とも言える小田原の《江之浦測候所》の生まれるきっかけとなった経緯から、創作活動のひとつの原点とも言える直島と江之浦を繋げる形で構想されました。江之浦測候所が建築と作庭などが中心となっているのに対し、本ギャラリーは、杉本博司の代表的な写真作品やデザイン、彫刻作品などを継続的かつ本格的に鑑賞できる世界的にも他に例をみない展示施設です。

    *1 瀬戸内国際芸術祭2022「作品鑑賞パスポート」対象外施設です。
  3. The Naoshima Plan 「住」*2

    The Naoshima Plan 「住」
    建築家・三分一博志による"The Naoshima Plan"は、島全体の風・水・太陽といった「動く素材」を浮き上がらせ、その美しさや大切さを再認識してもらい、次世代へ継承することを目的とした構想。本建築はその一環としての島に移住する人たちが住まう長屋の計画です。本展では、建設中の建築そのものを春・秋ごとの進行状況で公開。日本古来の伝統工法の応用により、耐震性・耐久性と「動く素材」の享受を両立した住建築を通して、鑑賞者に「地球に知的に『住』まう」こととは何かを問いかけます。

    *2 瀬戸内国際芸術祭2022春会期、秋会期のみ公開の施設です。
  4. INUJIMAアートランデブー

    INUJIMAアートランデブー
    「INUJIMAアートランデブー」は犬島において、人びとの交流のきっかけとなるような作品やイベントを展開するプロジェクトです。アーティスト 大宮エリーの作品が少しずつ島内に点在していきます。作品を目印にランデブー=待ち合わせをし、ときに休憩しながら、島を散策できます。子どもからお年寄りまで、さまざまな人がともに時間を享受できる、公園のような環境が犬島に広がっていくことを願っています。