犬島の集落に「日常の中の美しい風景や作品の向こうに広がる身近な自然を感じられるように」との願いを込め、2010年、企画展示を目的としたギャラリーを開館しました。アーティスティックディレクターに長谷川祐子、建築家に妹島和世を迎え、現在、「F邸」「S邸」「I邸」「A邸」「C邸」の5つのギャラリーと「石職人の家跡」に、さまざまなアーティストの作品を公開しています。集落に点在するギャラリーは、かつて建っていた民家の瓦屋根や古材、透明なアクリル、周囲の風景を映し出すアルミなど多様な素材でつくられています。長谷川は、島の風景を見ながら点在する作品を巡る体験を「桃源郷」をテーマにした一連の物語になぞらえています。
動物や植物を想起させる様々な形のオブジェや多様な物質の表面からなる彫刻など、複数の作品を「F邸」とその坪庭を含む建物全体の空間にダイナミックに展示しています。犬島という場を背景に、新しい生のかたちを表現しています。
名和晃平 1975年大阪生まれ。京都造形大学准教授、SANDWICH ディレクター。主な展覧会・プロジェクト:個展「GUSH」(2006年、SCAI THE BATHHOUSE)、個展「Transcode」(2009年、ギャラリーノマル、大阪)、個展「Synthesis」(2010年、SCAI THE BATHHOUSE)、第14回アジアン・アート・ビエンナーレ・バングラデシュ2010 最優秀賞受賞(2010年、ダッカ)、「名和晃平--シンセシス」(2011年、東京都現代美術館、東京)、個展「Kohei Nawa - Trans」(2012年、ARARIO GALLERY、チョナン、ソウル)
透明アクリルの壁が連なる「S邸」に設置された本作品は、大きさや焦点が異なる無数の円形レンズを通して周りの景色の形や大きさが歪んで映し出され、見る人に目に見える世界の多様性を促しています。
荒神明香 1983年広島生まれ。主な展示に2011年「建築、アートがつくりだす新しい環境――これからの"感じ"」(東京都現代美術館)、2011年「Bye Bye Kitty」(ジャパン・ソサエティ、ニューヨーク)、2012年「呼吸する環礁――モルディブ・日本現代美術展」(モルディブ国立美術館)など。
作家は「A邸」の建築について受けた、「周囲のコミュニティや自然が融合された彫刻である」という印象を基点に、犬島の自然のなかに見られる幾何形体や人びとの暮らしの生命感をエネルギーあふれる色を用いて仮想風景として表現。新たなリズムを生み出すとともに、見る人の想像力を掻き立てます。
ベアトリス・ミリャーゼス 1960 年リオデジャネイロ生まれ、同地在住。社会コミュニケーション学 を卒業後、1980~1983年パルケ・ラージ視覚芸術学校(リオデジャネイロ、ブラジル)で美術を学び、1996年まで同校で絵画の講師を務める。 ブラジルの代表的なアーティストの一人として評価を受けている。ブラジル国内外でキャリアを積み上げ、2003年、ヴェネツィア・ビエンナーレにブラジルの代表作家として出展。その他、サンパウロ・ビエンナーレ(1998年・2004年)、上海ビエンナーレ(2006年)など。主な個展に、州立ピナコテッカ美術館(サンパウロ、2008)、カルティエ現代美術財団(パリ、2009)、バイエラー財団(バーゼル、2011)、カルースト・グルベンキアン財団(リスボン)、ラテンアメリカ美術館(ブエノスアイレス、2012)、パソ インペリアル(リオ デ ジャネイロ)、オスカー・ニーマイヤー美術館(クリチバ、2013)、ペレス・アート・ミュージアム(マイアミ、2014~2015)。 作品はニューヨーク近代美術館、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館、メトロポリタン美術館、金沢21世紀美術館、ソフィア王妃美術館やポンピドゥー・センターに収蔵。
かつては集会所であった「C邸」にひっそりと置かれた大きな木彫は、まるで神聖な場に奉納された切り花のように静かなエネルギーを内包しています。犬島に生きる人々から発せられるエネルギーにインスピレーションを得た本作品は、島の「生」とともに呼吸し続けています。
半田真規 1979 年神奈川県生まれ。「なかきよの円卓景」(2015年、オオタファインアーツ)、「夏への扉--マイクロポップの時代」(2007年、水戸芸術館、茨城)、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」(2006年、新潟)。2008年より「Rolex Mentor and Protégé Arts Initiative」に参加。
「I邸」の空間に、向かい合う3つの鏡を配置した本作品は、2方向に開かれた窓からの風景を結びつけています。作品中央のある一点において、鑑賞者は無限のトンネルのただ中にいる自分を見つけます。タイムトンネルのような同心円の中に立つ鑑賞者は、無限の空間とつながるスポットにより、新しい感覚の旅に誘われます。
作家が作品について語った内容はこちらからご覧いただけます。
オラファー・エリアソン 1967年デンマーク・コペンハーゲン生まれ。王立デンマーク芸術アカデミー修了。コペンハーゲンとベルリンを拠点に活動。1990年代後半から数々の個展やプロジェクトを開催。2016年の主な個展:『Olafur Eliasson: Nothingness is not nothing at all』(上海・龍美術館)、『Olafur Eliasson Versailles』(フランス・ベルサイユ宮殿)など。
素材や場所そのものに蓄積された記憶に反応するように、描かれた動植物などの生命力あふれるモチーフが犬島の土地に根差し、さらには敷地を飛び出して集落内の路地にも展開していきます。
淺井裕介 1981年東京生まれ。絵描き。主な作品・展覧会・プロジェクト:「絵の種、土の旅」(2015年、彫刻の森美術館)、「yamatane」(2014年、Rice University Art Gallery、アメリカ)、「MOT コレクション | 特別展示 淺井裕介」(2011年、東京都現代美術館)。
アーティスティックディレクター・長谷川祐子、建築家・妹島和世による犬島の集落で展開するプロジェクトです。妹島和世は、新たな展示空間の創出にあたり、鑑賞する人と作品と島の風景が一体となるよう建物をデザインしています。
長谷川祐子
京都大学法学部卒業、東京藝術大学大学院修了。金沢21世紀美術館を立ち上げ、現在、東京都現代美術館参事、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授。犬島「家プロジェクト」アーティスティック・ディレクター。最近の展覧会は「第7回モスクワ現代美術国際ビエンナーレ:Clouds ⇄ Forests」(2017〜18年、モスクワ 新トレチャコフ・ギャラリー)、「Japanorama: A new vision on art since 1970」(2017〜18 年、ポンピドゥー・センター・メス)、「深みへ―日本の美意識を求めて―」(2018 年、パリ・ロスチャイルド館)、「Intimate Distance: the Masterpieces from the Ishikawa Collection」(2019 年、モンペリエ現代美術館)、「Desire : A Revision from the 20th Century to the Digital Age」(2019〜20年、アイルランド近代美術館)、「Inter-Resonance: Inter-Organics, Japanese Performance and Sound Art」展(2019〜20年、シャルジャ美術財団、アラブ首長国連邦)など。2018年、「ヴーヴ・クリコ ビジネスウーマン アワード」受賞。
犬島「家プロジェクト」コンセプト・ノート
妹島和世
1956年茨城県生まれ。1987年妹島和世建築設計事務所設立、1995年西沢立衛と共にSANAA 設立。2010年プリツカー賞受賞*。代表作に、「金沢21 世紀美術館」*(2004年、石川)、「犬島『家プロジェクト』」(2010年、岡山)、「ROLEX ラーニングセンター」*(2009年、スイス)、「ルーヴル・ランス」*(2012年、フランス)、「Junko Fukutake Hall」*(2013年、岡山)、「グレイス・ファーム」*(2015年、アメリカ)など。(* はSANAA)
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(1)バリアフリーについて
施設の特性上、バリアフリー対応になっていない場所がございます。あらかじめご了承ください。
お越しいただく際は可能な限りの入館サポートをいたしますので、施設へ直接ご相談ください。
(2)車椅子等の貸出について
・車いす:2台、貸し出しを行っています。予約はできません。チケットセンターでお申し出ください。
・筆談具:あります。
・多目的トイレ:あります。
・介助犬・盲導犬・聴導犬を同伴してご入館いただくことができます。
お客様の安全確保およびアート作品、建築作品の保護の観点から、ベネッセアートサイト直島の敷地内における事前許可のない無人飛行機(ドローン)の使用は固く禁止させていただきます。