特別企画【前編】「アートと出会うための旅があります」かしゆか(Perfume)

2015年に瀬戸内のアートを巡る一人旅をされたというPerfumeのかしゆかさん。当時の体験についてお話を聴かせていただきました。
"初めはただ驚いたり、わからなかったりでもいい。しだいに、あ、これ、好きとか、これ、ときめくとかが出てきます" アートの知識がないと不安な方も、かしゆかさんにアドバイスをもらって旅に出てみませんか?

「こういう島があったの? うれしい戸惑い」


初めて直島に行った頃、アートとかあまりわからないし、詳しくなかったんです。ギャラリーに勤めていた友だちと都内にある美術館に一緒に行ったときに『直島もいいよ。行ってみたら』と会話したのがきっかけでした。

その友だちが旅のスケジュールを組んでくれました。なにを見るべきかと。季節としてはゴールデンウィークのあと。天気は良くて、すごく暑かったですね。ひとり弾丸ツアーで直島と豊島と犬島に行きました。指示通りに動いてたので、どこからどうまわったのか、ちょっと覚えてなくて。

最初、港に着いたときに、草間彌生さんの赤いカボチャの作品を見て、こんなに普通に展示されてるんだと驚きました。美術作品って、美術館やギャラリーでしか見たことがなかったから、こんな外に、しかも囲いがあるわけでもなく、その中にも入れるなんて、と。
美術館とかだと説明を聞けたりしますけど、それもなくて、いったい何を頼りにどう解釈していけばいいのかなって、戸惑ったり。

でも、こういう島があったのか。自分は出身が広島なので、こんな近くにあったんだ、知らなかったっていうのも驚きでした。

赤かぼちゃ
草間彌生"赤かぼちゃ" 写真:渡邉修

──未知の世界にひとりで放り込まれた感じですね。「不思議の国のアリス」状態。順調に旅は進んだのでしょうか。移動とか、どれを見るとか。

バスと歩きで移動しました。家プロジェクトをいくつか見たり、地中美術館と李禹煥美術館に行ったり。そうそう、ジェームズ・タレルの「南寺」に行きました。《バックサイド・オブ・ザ・ムーン》という作品です。最初、暗い部屋に入ります。私は仕事柄、さまざまな視覚の体験とかをするのは怖くないというか、真っ暗な場所にも慣れている方だと思います。そういうときは好奇心の方が大きいですね。

NA-004.png
家プロジェクト「南寺」 ジェームズ・タレル"Backside of the Moon"写真:渡邉修

宮島達男さんの、一軒家の中に水が張ってあってその中で数字がカウントされていくという作品(「角屋」"Sea of Time '98 ")も見ました。あれはとても興味深く見ました。
いくつかまわったと思いますけど、覚えているのは碁会所の須田悦弘さんの作品ですね。好きなんです。作品を見て、ふと気づくと庭に椿の木が植えてある。須田さんのホンモノの花かと思うような彫刻もいいし、いろいろな仕掛けについてあとで聞いて驚いたり。

NA-112.png
家プロジェクト「碁会所」 須田悦弘"碁会所"写真:渡邉修
NA-027.png
家プロジェクト「碁会所」 須田悦弘"碁会所"写真:渡邉修

ひとり旅の好きなところは、誰とも喋らずに自分の解釈だけ、自分が感じたことだけを自分の中に落とし込んでフラフラすることなんです。疑問はそのまま持って帰ってしまっていいと思います。日頃、美術館とかもひとりで行ったり、友だちと行っても喋らなかったりなんです。

──家プロジェクトを見てから、美術館にも行かれたんですね?

地中美術館では大きなモネの睡蓮をいくつも見ました。教科書でしか見たことなかったような。あと、ジェームズ・タレルの作品がありますよね。タレルの作品が本当に好きで。あの、空の変化という自然のものを味方につけて、自分の作品として仕立てているのは素晴らしいです。いつか私が家を建てるなら、あんな空間を作れたらいいなぁとかまで考えてしまいます。

ジェームズ・タレル「オープン・スカイ」
ジェームズ・タレル「オープン・スカイ」2004 写真:畠山直哉

大竹伸朗さんの作った銭湯も見ました。直島銭湯「I♥︎湯」。富士山の絵だけ描いたとか、洗い場のタイルを作ったとかだけではなくて、なにしろ建物そのものから全部が全部、大竹さんの作品なのがすごいですね。実際にお風呂に入れるそうですけど、それはちょっと勇気がなかったです。

A7R06193-ARW_DxO_DeepPRIME.png
直島銭湯「I♥︎湯」 写真:井上嘉和

一つ一つ作品をまわって行って、こんなにたくさんの人の作品をいっぺんに見られる島があったことにあらためて驚きました。海外の有名なアーティストもいれば、日本人の作家さんも多くいます。それぞれに作風の全部違うものが集結しているというのがおもしろかったですね。それは行ってみてわかったことです。

──アート鑑賞も特別ですが、ホテルもここならではの経験ができますよね。

ホテルに着いたときにはもう夜に近くて、暗くなっていくところだったんです。海が見える部屋でした。明かりが外にはなくて、波の音だけが聞こえてくるのが新鮮でした。仕事でたくさんのホテルに泊まってきましたが、便利なホテルばかりで、部屋にテレビが無いことの不思議とか、メディア的な情報が遮断された空間で、部屋に飾られたアート作品や自然の音やその土地の景色を楽しむ時間が貴重な経験でした。

_S0A9735.png

(取材・文=鈴木 芳雄)

後編では、豊島、犬島のこと。アートの楽しみ方も。

かしゆかかしゆか


プロフィール

3人組音楽ユニットPerfumeのメンバー。2023年4月29日に大阪城ホールで開催のライブイベント「FM802 SPECIAL LIVE 紀陽銀行 presents REQUESTAGE 2023」に出演。6月にはスペインの音楽フェス「Primavera Sound 2023 Barcelona Madrid」に出演。また、初の大規模衣装展「Perfume Costume Museum」が兵庫県立美術館にて9月9日から開幕。「P.T.A.」発足15周年を記念したファンクラブツアーも9月21日より開催。
Instagram:kashiyuka.prfm_p000003

同じカテゴリの記事

特別企画【後編】「アートと出会うための旅があります」かしゆか(Perfume)

2023.04.14

特別企画【後編】「アートと出会うための旅があります」かしゆか(Perfume)

かしゆかさんに瀬戸内のアートを巡った旅についてお話を聴かせていただきました。後編...

続きを読む

カテゴリ検索